「使徒」という言葉を聞いた瞬間、あの不気味で圧倒的な存在感が脳裏によみがえる方も多いのではないでしょうか。
『新世紀エヴァンゲリオン』において使徒とは、人類の存亡をかけた戦いの根幹をなす存在です。巨大な異形の姿、理解を超えた能力、そして一体ずつ確実にやってくる恐怖。個人的にエヴァンゲリオンシリーズを何度も見返してきた中で感じるのは、使徒の魅力は単なる「敵キャラクター」にとどまらず、物語全体のテーマを体現する存在として設計されている点にあるということです。
この記事では、TV版を中心に全使徒を順番に解説しながら、その能力・デザインの意味・物語における役割までを網羅的にまとめました。新劇場版との違いにも触れていきますので、初めてエヴァに触れる方から考察を深めたい方まで、幅広くお楽しみいただける内容になっています。
この記事で学べること
- 使徒は「生命の実」を得た存在で、人類とは異なる進化の可能性そのもの
- TV版の使徒は第1使徒アダムから第17使徒タブリスまで全17体が登場する
- 最強クラスのゼルエルは初号機を覚醒させるほどの圧倒的戦闘力を持つ
- 物語後半の使徒は物理攻撃から精神干渉へと戦い方が根本的に変化する
- 新劇場版では使徒のナンバリングとデザインが大幅に再構成されている
使徒とは何か その定義と物語上の意味
使徒を理解するには、まずエヴァンゲリオンの世界観における「生命の起源」を知る必要があります。
作中の設定では、はるか太古に地球へ到来した「生命の種」が二つ存在しました。一つは「生命の実」を持つアダム、もう一つは「知恵の実」を持つリリス。使徒とは、アダムから派生し「生命の実」を受け継いだ存在です。この「生命の実」がもたらすのがS2機関(スーパーソレノイド機関)と呼ばれる永久機関であり、使徒はこれによって事実上無限のエネルギーと再生能力を手にしています。
一方、人類はリリスから派生し「知恵の実」を得た存在です。つまり使徒と人類は、同じ起源を持ちながらまったく異なる進化の道を歩んだ「兄弟」のような関係にあります。
この設定が物語に深い意味を与えています。使徒は単なるモンスターではなく、「もう一つの可能性としての生命」なのです。
ATフィールドという共通の力
使徒を語るうえで欠かせないのがATフィールド(Absolute Terror FIELD)です。これは使徒が展開する強力な防御壁であり、通常兵器をほぼ完全に無効化します。
興味深いのは、ATフィールドは使徒だけでなくエヴァンゲリオン、そして実は全人類も持っているという設定です。人間のATフィールドは「心の壁」として機能しており、個体を個体たらしめる境界線そのものとして描かれています。この概念が物語終盤の「人類補完計画」へと直結していきます。
使徒の行動パターンと目的
使徒には共通した行動パターンがあります。それは「必ず一体ずつ現れ、ネルフ本部(第3新東京市の地下)を目指す」という点です。
使徒同士が連携して攻撃してくることはありません。これは物語上の都合だけでなく、使徒がそれぞれ独立した存在であり、互いに協力する知性や意思を持たない(あるいは持つ必要がない)ことを示唆しています。彼らの目的はネルフ本部の最深部に安置されたアダム(実際にはリリス)への接触であり、これが達成されると「サードインパクト」が引き起こされ、人類は滅亡するとされています。
第1使徒から第5使徒まで 物語序盤の脅威

第1使徒アダムと第2使徒リリス
第1使徒アダムは、すべての使徒の始祖にあたる存在です。南極に存在していたアダムへの人為的接触が「セカンドインパクト」を引き起こし、世界人口の半数が失われました。物語開始時点ではすでに胎児のような姿にまで縮小されており、加持リョウジによってネルフへ運ばれます。
第2使徒リリスは、ネルフ本部の最深部「ターミナルドグマ」に磔にされた巨大な白い存在です。リリスは使徒でありながら人類の始祖でもあるという、物語の根幹に関わる極めて特殊な位置づけにあります。長らくその正体は「アダム」だと偽装されていました。
第3使徒サキエル
サキエルは、TV版第1話・第2話で碇シンジが最初に戦う使徒です。黒い体に鳥のような仮面、そして肋骨を思わせるデザインが特徴的で、多くのファンにとって「使徒」のイメージを決定づけた存在でしょう。
光の槍による遠距離攻撃と自己再生能力を持ち、国連軍の通常兵器はもちろん、N2地雷(核兵器に匹敵する兵器)ですら一時的に行動を止めるのが精一杯でした。初号機との戦闘では暴走した初号機に圧倒され、最終的に自爆という手段を選びます。
第4使徒シャムシエルと第5使徒ラミエル
シャムシエルは昆虫のような姿をした使徒で、触手状の光の鞭を武器とします。比較的シンプルな戦闘でしたが、シンジにとって「自分の意思で戦う」最初の経験となった重要な戦いです。
第5使徒ラミエルは、正八面体という完全な幾何学形態を持つ使徒で、そのデザインの美しさと圧倒的な火力から屈指の人気を誇ります。加粒子砲による超長距離狙撃能力を持ち、接近する物体を自動的に迎撃します。この使徒との戦いは「ヤシマ作戦」として描かれ、日本中の電力を集めてポジトロンスナイパーライフルで狙撃するという壮大な作戦が展開されました。
第6使徒から第10使徒まで 多様化する使徒の形態

物語中盤に入ると、使徒のデザインと能力はますます多様化していきます。ここからは「使徒は人型とは限らない」という事実が次々と突きつけられます。
第6使徒ガギエル
ガギエルは海中に出現した巨大な魚のような使徒です。エヴァ弐号機の輸送中に襲撃してきたことで、惣流・アスカ・ラングレーの初登場エピソードと結びついています。水中戦という特殊な状況で、弐号機とアスカの実力がお披露目されました。
第7使徒イスラフェルと第8使徒サンダルフォン
イスラフェルは分裂能力を持つ使徒で、二体に分かれて同時に行動します。片方を倒してももう片方が再生するため、シンジとアスカが息を合わせた同時攻撃で撃破する必要がありました。あの「ユニゾン特訓」のエピソードは、シリアスな物語の中での貴重なコミカルパートとしても印象的です。
サンダルフォンは火山の中で発見された使徒の幼体で、マグマの中での捕獲作戦が展開されました。
第9使徒マトリエルと第10使徒サハクィエル
マトリエルは蜘蛛のような姿の使徒で、強力な溶解液を武器とします。ネルフ本部が停電した最悪のタイミングで襲来し、パイロット3人の連携で撃破されました。
サハクィエルは宇宙空間から自らを「爆弾」として落下させるという、スケールの大きな攻撃方法を持つ使徒です。軌道上から正確にネルフ本部を狙い、エヴァ3機の連携でかろうじて受け止められました。
使徒の攻撃タイプ分類
第11使徒から第14使徒まで 境界を揺るがす存在たち

第11使徒イロウルと第12使徒レリエル
イロウルは、使徒の概念を根底から覆す存在です。目に見える巨体を持たず、微生物サイズの群体としてネルフのコンピュータシステム「MAGI」に侵入しました。エヴァンゲリオンで戦うことができないこの使徒は、赤木リツコの知性によって撃退されます。「使徒は巨大な怪物」という先入観を打ち砕いた一体です。
レリエルは、空中に浮かぶ巨大な球体……と思いきや、実はその球体は「影」であり、地面に広がる影のように見える部分が本体という、認知を裏切る使徒です。内部にはディラックの海と呼ばれる虚数空間が広がっており、初号機を飲み込みました。
第13使徒バルディエル
バルディエルは、エヴァンゲリオン3号機に寄生した使徒です。この戦いは物語全体の中でも最も残酷なエピソードの一つとして知られています。
3号機のパイロットは鈴原トウジ。友人が乗っているエヴァを破壊しなければならないという状況で、シンジは戦闘を拒否します。結果としてダミープラグシステムが起動し、初号機は自律的に3号機を破壊。シンジの意思とは無関係に友人が傷つけられるという、碇ゲンドウへの決定的な不信感が生まれた瞬間でした。
第14使徒ゼルエル
ゼルエルは、作中最強クラスの使徒として多くのファンから認識されています。
その圧倒的な戦闘力は凄まじく、弐号機を一撃で戦闘不能にし、零号機の特攻すら通用しませんでした。ネルフ本部の装甲を紙のように切り裂き、ジオフロントまで侵入。活動限界を迎えた初号機が追い詰められた末に「覚醒」し、S2機関を取り込むという衝撃的な展開へとつながります。
この戦いは、エヴァンゲリオンが単なる兵器ではなく「生命体」であることを決定的に示した転換点です。
第15使徒から第17使徒まで 精神と存在への侵食
物語終盤の使徒たちは、物理的な脅威から精神的・存在論的な脅威へと明確にシフトしていきます。
第15使徒アラエル
アラエルは衛星軌道上に滞空し、地上には一切降りてきません。その攻撃手段は光の翼による「精神汚染」。アスカの心に直接介入し、彼女のトラウマや抑圧された記憶を強制的に暴き出しました。
物理的には無傷でも精神が完全に破壊されるという、エヴァンゲリオンでは対処不能な攻撃です。最終的にロンギヌスの槍の投擲によって撃破されましたが、アスカの精神的ダメージは回復せず、彼女の戦線離脱へとつながります。
第16使徒アルミサエル
アルミサエルは二重螺旋(DNAを思わせる形状)の使徒で、エヴァンゲリオンと融合しようとする能力を持ちます。零号機に侵食を開始し、綾波レイの内面世界に干渉。最終的にレイは零号機ごと自爆するという選択をし、アルミサエルを道連れにしました。
この戦いは綾波レイが「自分の意思で選択する」という、彼女にとっての大きな転換点でもあります。
第17使徒タブリス(渚カヲル)
タブリスは人間の姿をした使徒であり、その正体は渚カヲルです。
フィフスチルドレンとしてネルフに送り込まれたカヲルは、シンジと心を通わせます。「好きってことさ」という有名な台詞に象徴されるように、シンジにとって初めて無条件の好意を示してくれた存在でした。しかしカヲルはターミナルドグマへ向かい、最終的にシンジの手で命を絶たれます。
好意を持った相手を自らの手で殺さなければならないという経験は、シンジの精神を決定的に追い詰め、物語は最終局面へと突入していきます。
新劇場版における使徒の再構成
新劇場版(ヱヴァンゲリヲン新劇場版)では、使徒のナンバリングとデザインが大幅に変更されています。
TV版で第3使徒だったサキエルは新劇場版では第4使徒に、ラミエルは第6使徒にと番号がずれています。これはTV版で第1・第2使徒だったアダムとリリスの扱いが変わったことに起因しています。
デザイン面でも大きな変化があります。特にラミエル(新劇場版・第6の使徒)は、正八面体から変形を繰り返す流動的なデザインに進化し、攻撃時・防御時で形態が変わるという演出が加えられました。CGの進化を最大限に活かしたこの表現は、多くのファンから高い評価を受けています。
新劇場版オリジナルの使徒も登場しており、特に『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』以降は、TV版とはまったく異なる展開が繰り広げられます。500 TYPE EVAのようなエヴァンゲリオン関連コンテンツでも、TV版と新劇場版の違いは常に話題になるテーマです。
TV版の特徴
- 全17体(アダム〜タブリス)
- 名前はユダヤ・キリスト教の天使名
- セル画による独特の質感
- 後半は精神干渉型が増加
新劇場版の特徴
- ナンバリングが1つずつずれる
- 個体名ではなく「第○の使徒」表記
- CGによる流動的なデザイン
- オリジナル使徒の追加
使徒のデザインに込められた象徴と意味
使徒の名前はすべてユダヤ教・キリスト教における天使の名前から取られています。これは単なるネーミングの趣味ではなく、作品全体に散りばめられた宗教的モチーフの一部です。
たとえばサキエルは「神の覆い」を意味し、ラミエルは「神の雷」、ゼルエルは「神の腕」を意味します。それぞれの使徒の能力や特徴が、名前の意味と呼応している部分もあり、庵野秀明監督のディテールへのこだわりが感じられます。
デザイン面では、初期の使徒は比較的「生物」としての形態を保っていますが、物語が進むにつれて抽象的・概念的な存在へと変化していきます。レリエルの虚数空間、アラエルの精神干渉、そしてタブリスの人間の姿。この変化は、物語のテーマが「外部の敵との戦い」から「内面・存在そのものとの向き合い」へとシフトしていく過程と完全に一致しています。
使徒の強さランキングと考察
ファンの間で常に議論されるのが「最強の使徒は誰か」というテーマです。これまでの取り組みで感じているのは、単純な戦闘力だけでなく「脅威度」という観点で考えると、また違った見方ができるということです。
使徒の脅威度比較(ファン考察に基づく評価)
ゼルエルが最強とされる理由は明確です。エヴァ弐号機と零号機を単独で撃破し、ネルフ本部の24層もの特殊装甲を突破。初号機の覚醒がなければ人類は滅亡していました。
一方、アラエルの脅威は別次元にあります。物理的に倒す手段がエヴァンゲリオンにはなく、ロンギヌスの槍という「切り札中の切り札」を使わざるを得ませんでした。しかもその槍は使い捨て。戦略的に見れば、アラエルとの戦いで失ったものの大きさは計り知れません。
使徒が物語に果たした本当の役割
使徒は確かに「敵」ですが、エヴァンゲリオンという物語において、使徒の真の役割は「キャラクターの内面を引き出す触媒」です。
サキエルとの戦いはシンジの「逃げちゃダメだ」という葛藤を、バルディエルはシンジとゲンドウの断絶を、アラエルはアスカの脆さを、そしてタブリスはシンジの孤独と人とのつながりへの渇望を浮き彫りにしました。
使徒が一体ずつ順番に現れるという構造は、エヴァンゲリオンが本質的に「成長物語」であることを示しています。各使徒との戦いは、キャラクターたちが自分自身と向き合わざるを得ない「試練」として機能しているのです。
この構造は、エヴァ考察勢が戦略性で選ぶ日本人向けオンラインカジノのテーブルゲーム完全ガイドでも触れられているように、エヴァンゲリオンの「戦略的思考」というテーマとも通じるものがあります。
よくある質問
使徒は全部で何体いるのですか
TV版では第1使徒アダムから第17使徒タブリスまでの全17体です。ただし、アダムとリリスは直接的な戦闘対象としては登場しないため、「戦った使徒」としては15体と数えることもあります。新劇場版ではナンバリングが異なり、総数の解釈も変わるため、どのシリーズを基準にするかで答えが変わります。
使徒はなぜ一体ずつしか来ないのですか
作中で明確な理由は説明されていません。ファンの間では「使徒同士は互いを認識・協力する知性を持たない」「アダムから派生した個別の存在であり、連携する動機がない」といった考察がなされています。物語構造としては、一体ずつ現れることでキャラクターの成長と物語の段階的な深化を描く仕組みになっています。
使徒の目的は何ですか
使徒の最終目的は、ネルフ本部の最深部に安置された存在(表向きはアダム、実際にはリリス)への接触です。使徒がリリスと融合すると「サードインパクト」が発生し、人類は滅亡するとされています。ただし、使徒自身がこの目的を「意識的に」理解しているかどうかは不明であり、本能的な帰巣行動に近いものとも解釈されています。
エヴァンゲリオンも使徒なのですか
はい、エヴァンゲリオンはアダムのコピーをベースに作られた人造の存在であり、広義には使徒と同じカテゴリーに属します。ATフィールドを展開できるのもそのためです。初号機はリリスから作られたという特殊な設定を持ち、他のエヴァとは根本的に異なる存在です。エヴァが使徒を倒せるのは、「使徒と同じ存在だからこそATフィールドを中和できる」という理屈に基づいています。
新劇場版の使徒はTV版とどう違いますか
大きな違いは3点あります。第一に、ナンバリングが1つずつずれています(TV版の第3使徒が新劇場版では第4の使徒)。第二に、デザインがCGを活用して大幅にリファインされており、特にラミエルの変形表現は象徴的です。第三に、新劇場版オリジナルの使徒が登場し、『Q』以降はTV版とはまったく異なるストーリーラインが展開されます。
エヴァンゲリオンの使徒は、アニメ史上最も深く設計された「敵」の一つです。一体一体が異なる姿・能力・テーマを持ち、倒すたびに物語とキャラクターが変化していく。その全体像を把握することで、エヴァンゲリオンという作品の奥深さがより一層見えてくるはずです。
これからエヴァンゲリオンを見返す方も、初めて触れる方も、使徒の存在に注目しながら物語を追ってみてください。きっと、新しい発見があるはずです。
